The moment

写真で食っていくためのノウハウ、風景写真のテクニックなど紹介します。

旅とは新しい風景をみることではなく、新しい目をもつこと

自分探しの旅なんてそれっぽい言葉があるけど、よそに自分を求めたところで見つかるはずはないでしょう。驚く景色に出会おうがが世界遺産を巡ろうが単なる暇つぶしに過ぎず、良くも悪くもカルチャーショックのような体験をしてこそといえるのではないかと思います。それらを写真に置き換えると事実として写したものは(情報はいくらでも入ってくるので)どこかマンネリ化し、一方、新しい提案をしている写真は見慣れた景色でも旅をしている、旅を共有しているという新鮮な感覚を覚えます。

先日の講座で「いい写真とはなんですか?」「個性ってなんですか?」とひっきりなしに質問され幾つかの例を出しましたが、後にこんな事を出しても良かったかなというカンボジア旅行を紹介します。

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世界遺産はツーリストのためのランドマーク

海外旅行は見るものだけでなく生活様式そのもの(つまり体験するすべて)が新鮮ですが、それはやはりツーリスト目線でしかなく想定される枠の中にあるものです。その事実を写真として発表しても今まで何十年と繰り返されてきたものばかりで、新鮮な情報や思考に出会うことは極稀というかもはや新しい情報はないに等しいと言えるかもしれません。

世界遺産とはツーリストのための分かりやすいランドマークであってそこに個性が入り込む余地は少ないでしょう。さらに言えばアンコールワットをはじめとする遺跡の撮影に本人の満足感以外に映り込むものはないかもしれません。情報として溢れているものや誰が撮っても同じものに対し価値をだすのは難しく、存在の大きさが写真を上回りません。ましてや写真展案内ハガキなどのメインイメージにアンコールワットの写真を使うのは器の小ささを露呈しかねない考え方によっては危うい行為かもしれません。。

それが考古学者という肩書のある人ならともかくわたしたち外国人である以上、遠い他者の何者でもありません。

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カンボジアはエネルギッシュで若々しい国

長い時を経て残る遺跡レリーフに描かれた物語から古今を現地で少なからず想像しますが、地球の歩き方などガイドブックに書かれていないこととして私はエネルギッシュで若々しい国だと感じました。前情報にある遺跡=古いものという対にあたるもの。現地を訪れることで感じた新しい情報です。そんなエネルギーのようなものを写真に置き換える時、様々な手法があると思いますが、例えば写真らしい表現として流し撮りのスピード感に集約できるように思えてこれら相当数の流し撮り撮影をしていました。

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いい写真とは期待するもの、裏切るもの

いい写真という定義は立場によって大きく変わりますが、例えば著名な作家の写真をいい写真とする場合、2パターンあるように思います。

  • 連続シリーズ(長編小説)
  • 単発シリーズ(ショートショート)

連続シリーズは前後の作品とともに長辺小説のように捉えられるように思いますが、◯◯さんは猫写真といったような◯◯さんと言えば代表作はこれだとズバリ言えるもの。一方、単発シリーズは今度展示します!と告知があった時、予想できない新作を出しづつけるパターン。これはいい意味で裏切ってくれます。見る側の好みなどどちらが優れていることはありませんが例えば、私の感じたカンボジアは躍動感に溢れていました等のコメントを付け、終始流し撮りに集約するという手法に徹してみても、カンボジアで画像検索するとアンコールワットの写真がひたすら出て来る中にエッジとして存在し、それはいい写真と言えるのかもしれません。

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旅とは新しい風景をみることではない


本当の旅は新しい風景をみることではなく、新しい目をもつことにある。(マルセル・プルースト)