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写真で食っていくためのノウハウ、風景写真のテクニックなど紹介します。

【風景写真を考える vol.7】撮影ツアーで正解を求めると(思考や視野が)限定的になる / 表現とは自己紹介

旅行会社クラブツーリズム撮影ツアーに同行する講師をしています。講師というのは現地ガイドであったり、撮影に関するノウハウをお伝えする役割です。

今年の桜は例年より1週間くらい早かったでしょうか。撮影ツアーは例年の開花状況に合わせて日程を決めるため、今年はどこに行っても開花ピークを過ぎていました。しかもずっーとです。

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先週から今週にかけて、いずれも残雪の富士山と桜をご案内する撮影ツアーでしたが、雨なので富士山は雲の中です。。残念ながら桜もありません。。

募集の作例にあるような写真を撮れるはずなく、移動中バスの空気はどんよりとしていて、当日キャンセルが多いのも事実です。。

風景写真の正解を撮りたい

いろんなジャンル、幅広い年代の方々と接していると、特に風景写真を取り組んでいる人たちに正解を求められることが多いように感じています。その正解というのは撮影ツアーの募集作例を撮るにはどんなふうにしたらいいかという質問であったりします。

つまり個性のある1枚より、作例と寸分たがわぬ写真を撮るために参加しているという印象が少なからずあります。

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  • どこで撮ればいいですか?
  • レンズは何を使えばいいですか?
  • 撮影設定は?
  • 絞りはいくつ?
  • PLフィルター使いますか?
  • 構図は?
  • ハレ切りは?

(もちろんぼくの役割りとしてそれが求められているので、質問以上にお伝えしています。)

雨は自然、朽ちた花だって自然

今回のように開花状況や天候が原因で作例と同じように撮れないことがあります。それでも季節や天気にその時しか撮れないシーンがあるはずで、そういったところに関心を持ってもらえるといいなと思っています。移動中にバス車内のモニターを使ってそれら作例をお見せしますが反応は様々です。

「あ、そういう撮り方があるのね」という明るい表情が1/3くらい、「どうせ今日は撮れないもんね」という反応が1/3くらい。。募集作例と違うし雨の日の撮り方なんて見る気もないといった感じの方が1/3くらい。。。

もちろん、紹介方法を改善していけば受け入れられるのかも知れません。ごくたまに撮影地に着いてもバスから降りない人もいるので、ぼくの役割りとしては残念です。。

でも自然風景をテーマに取り組んでいるなら、雨は自然だし、朽ちた花だって自然という考えをもってもらえたらいいですね。

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雨なら雨の撮影を

今年の桜撮影ツアーは開花ピークを過ぎていて、どこも雨でしたが、今回は行く先々で一面ピンク色になった道や花びらと天露の撮影をしていました。春がきた!!という感じはしませんが、雨は雨で落ち着いた春がいいと改めて感じました。

雨だからダメだと思えばそれまで。想定外の条件でも好奇心・関心をもっていれば発見があるのではないでしょうか。


水たまりの映り込み
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紫陽花の若葉色とさくら
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どこも桜のジュータン
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花筏
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散る花あれば、咲く花もある
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春色の雫
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撮影:EOS Kiss X7i


雨なら雨の撮影を

「いつまでたっても定番写真から抜けられないんだけど、どうしたらいい?」と尋ねられることがありますが、定番でないことをするの一番の近道なのかもしれません。

与えられた正解ではなく、自分で考えてみること、歩くことで対象に出会うことをお伝えしたい。そして想定していなかった条件に身を置くことは、気付きにつながるでしょう。

少なくともぼくの場合は条件がどうあれ、その瞬間に立ち会っていることを喜びとしながら撮影しています。

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F(エフ)見上げればいつも(テラウチマサト)

先日、テラウチマサト先生F(エフ)見上げればいつも 出版記念パーティーに参加しました。撮影対象は富士山ですが、いわゆる富士山でなくそれぞれの撮影意図やエピソードは今までの風景写真にないもので新鮮な気持ちでトークを聞かせていただきました。

一方、テラウチマサト先生はこのようなことをお話になっていて、風景写真は経験や歳を重ねることがベースにあるのかと思いました。

風景とは思い出の歴史である。
綺麗だなと思う瞬間、思い出すことがある。

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写真表現は自己紹介

また、パーティの後にこんな事を教えていただき、同じく風景写真に通ずると感じました。

自己紹介をして覚えてもらえなかったら、聞き手が悪いのではなく自己紹介の仕方がよくないんじゃないかな


自己表現として写真を撮るのであれば、それは自己紹介に置き換えることができます。それが伝わらなければ、表現方法を考える必要があるかも知れないし、ありきたりな自己紹介であればたくさんの中のひとりであって、それは定番写真という括りになるのだと思います。

最後になって少し脱線してしまいましたが、撮影に正解はなくそれぞれが常に絡み合っている関係性の表現が作品かと思ったので、追記しました。

日本人なら誰もが知っている富士山に角度をつけて対峙するような定番にとらわれない一冊、テラウチマサト先生の F(エフ)見上げればいつも はこちらから購入できます。(もう完売!?)

>> テラウチマサト写真集 F(エフ)見上げればいつも

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