The moment

写真で食っていくためのノウハウ、風景写真のテクニックなど紹介します。

鷲尾倫夫写真展 巡歴の道 オキナワ II で思わず泣いてしまった

鷲尾倫夫写真展「巡歴の道 オキナワ II」(銀座ニコンサロン)の会場を一周したところで不意に涙が止まらなくなってしまった。見かねた鷲尾さんは「君にこれをあげるよ」と写真集を差し出してくださった。写真展会場にいるとどこからともなく湧いてくる感情が止まらなくなって逃げるように後にした。震災以来、ぼくは各地で悔しく思いながら風景写真を撮っている。辺野古基地問題も同じく重なるものがある。

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写真を撮る使命感を持っているか?

来年の展示のためキヤノンの展示担当者と打ち合わせをしてきた。座って話すのは3年ぶりで「最近風景写真撮ってないんです。」など近況報告をした。正確には風景を含めたもう少し広い範囲で活動をしている。

もう6年前のこと。会社をやめた後、裏磐梯のペンションで写真修行の居候生活をしていた時期がある。そこで常に葛藤があり、居候生活を辞めようと思ったのは戦場カメラマン 渡部陽一氏の存在だった。そのころ渡部陽一氏の独特な話し方が話題になりテレビなどメディアでよく見かけた。視聴者の多くは芸能人の中のひとりとして見ていたと思うが、命を懸けてでも撮りたいものがある渡部陽一氏を尊敬してた。

一方、ぼくはどうなんだろう?きれいな風景写真を撮りたいから。写真が楽しいから。空っぽな自分に気づき虚しくなった。一体自分は何なんだろうと怒りもあった。

その後、いろんな事があって世界の見方が変わった。例えば、今年3月のパリ展示とか7月のTIP展示とか。

不幸にも望まざることが自分を成長させたと思う。

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鷲尾倫夫 写真展「巡歴の道 オキナワ II」

このようなことを書き始めるときりがないのだけど、ぜひ写真展会場に足を運んでもらいたい。随分前の記録かと思っていたけど、撮り始めたのは2011年とのこと。今も昔も変わっていないように思う。

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日本・沖縄の歴史に対し、無知ゆえに無関心でいた。其処から私の沖縄通いが始まった。沖縄の今、人々の日常生活に一歩踏み込み、一齣、一齣を拾い集め、悲しい時代、昭和の歴史全体が見渡せる写真を切り撮りたいと考えた。想像に応える写真、写真としての存在感があり、人々の心に落としたいと、視点をここに置き挑み続けている。


何回も足を運んでいる洞窟に意を決し、深夜に出向いた。入口まで来ると真暗闇だった。摺り足で階段を降りた。目の前の小川の水流音が不気味に響き、尖った神経が、激しい動悸に変わった。空気は湿っぽく重い、風がない、樹々の葉に覆われ空は隠れていた。目を凝らしあたりを見回すが何も見えない。身体は小刻みに揺れだし立っていられない。尻を地面に落としても呼吸の乱れからくるのか、体は治まらない。少しでも動くと足下で骨の折れるような音が全身を縮みあげる。逃げだしたかったが方向感覚を失っていた。恐怖感が心身に駆け巡り、体を丸め頭を両手で抱え、おでこを膝に置きじっとしているしかなかった。思考能力は働かなかった。瞼にうっすらと明るいものを感じ、目を開くと階段の上に薄い光が斜めに射していた。五時間余り洞窟を目の前にしていたはずなのに背を向けていた。多くの命を奪った聖地に我が身を寄せることで何か見えて来るのでは。しかし何も持ち帰ることは出来なかった。のちのち洞窟での体感は私を変えた。私に、私の在り方をみる貴重な時間だった。


今まで不躾に聞きにくい事を聞くのが、仕事と思いあがっていた。それ以来、高齢者たちの心に染み広がる傷口を切り開いて、塩をすり込む話を持ち出すことはなくなった。内なる傷を明かさないのは、我が身を守るためではないのかと、私は想像できるようになった。

鷲尾倫夫 写真展「巡歴の道 オキナワ II」

会場:銀座ニコンサロン
  • 住所:東京都中央区銀座7-10-1STRATA GINZA(ストラータ ギンザ)1・2階
  • 会期:2015年11月4日水曜日~2015年11月17日火曜日
  • 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休
  • 入場:無料
会場:大阪ニコンサロン
  • 住所:大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
  • 会期:2015年12月17日木曜日~2015年12月29日火曜日
  • 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休
  • 入場:無料