The moment

写真で食っていくためのノウハウ、風景写真のテクニックなど紹介します。

池上諭・榎本祐典二人展「遠吠え」@Alt_Medium

密柑が赤く熟れる時分 で、第1回 epSITE Exhibition Awardを受賞されたばかりの、池上諭さんと榎本祐典さんの二人展「遠吠え」@Alt_Mediumに行ってきました。両者の写真は伝えるにもはっきり伝えきらない何とも言えない距離感があり、間合いや行間のようなものを強くを感じます。風景写真(ではないけど)を学ぼうとしている方には提言になり得る、落ち着き成熟した写真作品です。

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池上諭 / 榎本祐典二人展「遠吠え」 Alt_Medium

突き放し、手放さない距離感

花や果実の盛りのように季節や対象となる明確なものが写っているわけでなく、かといってパーソナルともいい難いのに突き放さない私的な写真群。そして、写真教室で習うような構図論に説明できるものでもないはずなのに、両者のカラー・モノクロプリントがどちらも突出することなく存在し合うことに心地よさを感じます。何度も見ているとカラーだった写真がモノクロに見えたり、モノクロが色付きはじめたりします。それら問いかけとも言える何かは自問することでしか解決のしようのない、写真を通り越したものを感じる空間で、それは二人展だから表現・味わうことのできるものなのかも知れません。

池上諭さんとの出会いは? という会話が会場で出て過去を振り返りふと感じたこと。二人展「遠吠え」で強く感じる距離感ですが、それら感覚をセンスとか才能といったもので片付けるものではありません。淡々と継続して積み重ね、そこでにじみ出るものが池上諭さんらしさであり、ついに高みへ抜け出したものが、密柑が赤く熟れる時分の受賞理由そのものなのではないでしょうか。今回二人展の写真は、限りなく積み重なった断層から選ばれるべくして露出した1ページと言えます。

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2018年2月 密柑が赤く熟れる時分(epSITE)


池上諭・榎本祐典二人展「遠吠え」

それぞれが中心を離れて、便利さを遠ざけながら進む。一見、関連性のない時間と場所でも2人の意識は時に交じり合いそれを凝視する。日本各所に点在した縁もゆかりもない場所に身を預け、土地勘が働かないこの場所では太陽の高さと時刻で大雑把な方角を定めてみた。次第に人家は疎らとなり空は広がる、自然と営みとが均衡していき私達もそれに心地よく馴染む。なぜ、私達は都会に住みながら地方を目指すのか、なぜ此処でシャッターを押したのか。ふとそう思った瞬間、ただ静まり返った場所に微かに聞こえた遠吠えは 2 人同じものだったのかもしれない。
−池上諭、榎本祐典

  • 4月12日(木)~17日(火)
  • 12:00〜20:00(最終日〜17:00)
  • Alt_Medium
  • 東京都新宿区下落合2-6-3 堀内会館1F
  • 03-5996-8350
  • inquiry@altmedium.jp

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池上諭・榎本祐典 両氏

池上諭写真展:密柑が赤く熟れる時分@エプサイト新宿

muto.photowork.jp