小池英文写真展「瀬戸内家族」で、日本人が憧れるほどの日本というのがあるんだと気付かされました。記憶の遠くにぼくも同じような光景があったように思います。それは田んぼにまだホタルがいた頃でした。小池さんのささやかなプライベートの宝物であるとともに見る側は忘れていた記憶から共感を引き出す強さがあります。そして、そこに写された写真とともに小池さんの言葉が自然で美しく、写真展会場でそれを立ち読みするのでなく静かに手にとって読みたいと思いで写真集を購入しました。写真というのは2次元に存在するのではなく形を変えて作家の元から羽ばたいていく姿を見る機会でした。
小池英文写真展「瀬戸内家族」 コニカミノルタプラザ
コニカミノルタプラザは巨匠から有望な若手まで数多くの写真作品を展示してきました。運営するコニカミノルタはカメラ・写真事業から撤退して10年になります。「文化・芸術への貢献という役割は果たした」として2017年1月23日(月)に終了になりますが、最終回に相応しく静かながらも素朴で美しい写真展です。当たり前であることに憧れる、そんな姿を写真会場でみました。
瀬戸内海に浮かぶ小さな島で妻は生まれ育ちました。正月と夏休みには東京を離れ、彼女の島の実家で過ごす。それが私たち家族の毎年の決まりごとです。そこで目を見開かされたのが、東京とは違うもうひとつの時間が島に流れていることでした。季節のめぐりに寄り添った暮らし。親から子へ、子から孫へと受け継がれてゆく心と知恵。島という場所には人間の生活様式や行動形態が純粋に温存されていることが多いものですが、それが郷愁を超えて、未来を照らすひとつのパラダイムを担うのではないか。そんな問いに衝き動かされ、撮影を続けてきたのがこの「瀬戸内家族」です。家族をモチーフに据えたのは、季節と同じようにそこに循環する時間が流れていると思われたからです。また大人以上に、自然や季節や時間のなかに無心で心を開いてゆけるのは子供たちです。東京で生まれ育った子供たちが瀬戸内という風土とどのように交わってゆくのか。その姿を通して、私たちの来し方行く末をもう一度問い直してゆければと思います。
コニカミノルタプラザ
- 展示期間:2017年1月14日(土)~23日(月)
- 開館時間:10:30~19:00(最終日は15:00まで)
- 住所:東京都新宿区新宿3-26-11 新宿高野ビル4F
コニカミノルタプラザ 運営終了のお知らせ | コニカミノルタ
- 作者: 小池英文
- 出版社/メーカー: 冬青社
- 発売日: 2017/01
- メディア: 大型本
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