The moment

写真で食っていくためのノウハウ、風景写真のテクニックなど紹介します。

今さらモノクロ暗室を作った訳 PHaT PHOTO文化祭 #PPS文化祭

「PHaT PHOTO」写真教室 文化祭のライトニングトーク参加しました。ライトニングトークとは、5分間でプレゼンテーションを次々と行う発表機会で、作品制作に関することやレンズについて、受賞して変わった内外のことなど写真にまつわる様々な意見交換の機会でした。ぼくは、(今さら)暗室をつくった理由を発表しました。(運営・司会の平井義浩さんのブログ記事もあるよ

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満員の会場 / 運営・司会の平井 義浩さん(撮影:PHaT PHOTO文化祭 実行委員)


PHaT PHOTO文化祭ライトニングトーク

自己紹介しているうちに持ち時間を使い果たしてしまうような人もいるくらい、5分で話すことはよっぽど整理が必要ですが、要点を端的に提案できるライトニングトークは文化祭という名の元、アカデミックなイベントでした。

  • 写真家さんは、いい人が多い(平井義浩)
  • 写真甲子園 夏(日原慧子)
  • 御苗場で賞を取って変わったこと(岩野麻子)
  • アプロプリエイト作品から学ぶリファレンス(鈴木雄二)
  • ボケ(増永隼人)
  • 東京(中井和味)
  • 今さら暗室を作ったワケ(武藤裕也)
  • 私の写真に必要なもの(笹沼竜佑)
  • 蚊取り線香を長時間露光で撮影する方法(東太郎)
  • フランスのクロワッサンはおいしい(本多俊一)
  • 自分を写す(菊田淳)
  • 写ルンですで写すんです(笹沼香世子)
  • 台北101跨年煙火(相澤良幸)



個人的なツボは、杉本博司 蝋燭の一生 にインスパイアされた作品、東 太郎氏 蚊取り線香の一生 (蚊取り線香を長時間露光で撮影する方法)の発表でした。火が燃え尽きるまでを1枚に写し込む行為は同じですが、ろうそくがうずまきになると何故かコミカルになってしまう不思議です。笑

東 太郎氏の作品をみたのは2017年御苗場で、インパクトのある絵柄だったのでよく覚えています。お互いに西武そごうアートディレクター寺内 俊博氏のノミネートでした。(懐かしい。)

(ライトニングトークで紹介できなかった、銀河系のごとく撮影した貴重な蚊取り線香カットが出てきました。)

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東 太郎氏 MOSQUITO COILS(御苗場2017年)

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西武そごうアートディレクター寺内 俊博氏のノミネート

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まさか蚊取り線香の撮影方法を聞けるとは!笑(撮影:PHaT PHOTO文化祭 実行委員)


今さらモノクロ暗室を作った訳

さて、暗室の話に戻ります。暗室はそもそも作るの大変ですし闇雲に作ってしまった訳ではありません。写真の価値を意識した時、写真をアップデート(変わりゆく時代に適合)させていかなければいけないと至った答えのひとつが暗室でした。(モノクロか?カラーか?その両方にするか?についてはまたの機会に。)

暗室に全てをかけているわけでも、フィルムを残そうプロジェクトといった義務感ではありません。逆風だからこそ生まれた可能性のひとつとして選択肢のひとつとして暗室・アナログプロセスがあるのではないかと思います。

写真をアップデートさせる必要がある

写真という形態は時代とともに変っていっている、つまり写真の価値が変わっていっているはず。例えば風景写真に個性を感じなくなったよう、表面に起こっていることに意味がなくなっているのではないかと考えています。といっても写真は2Dの絵柄なので表面はそもそもに当たる大事な部分です。そんな矛盾を抱えているのかも知れません。

絶景写真はなくなったのではないのではないか? という記事を4年前に書いていました。
photowork.jp

  • 価値があるとすれば表面でなく別の所で発生しているのではないか?
  • 1日に数億枚UPされている中で価値のある1枚はどんなものだろう?



写真は複製できるメディア

また、写真は複製できるメディアです。価値をものに置き換えると複製すればするほど薄まっていく原理はいうまでもありません。

  • コピーが簡単なデジタルデータ
  • コピーできるけど、手間のかかるアナログプロセス
  • 1点しか制作できないフォトグラム(印画紙)

だからフィルム写真の方が良いというものではなく、デジカメで富士山を撮っても、フィルムカメラで富士山を撮っても表面的には同じです。カメラは目的に応じた富士山の撮り方を選べるツールでしかありません。でも、そこに価値を見出すものがあるとしたら教養が関わってくるのではないだろうか? と感じています。

不完全性と手間にかかる魅力

デジタルカメラとフィルムカメラを比較するとフィルムカメラの不完全性に潜む魅力に気づきます。比較的簡単かつスキのない(完璧な)1枚を仕上げられるデジタルカメラと、不確定な要因を多く含むフィルムカメラ。完璧が溢れているからこそ、あえて手間がかかり、時には不完全なアナログプロセスが魅力的に思えてきます。それは、電車乗り換え検索で、遠回りルートを提案するアプリというのもあるくらい理解と価値の幅は広いのかもしれません。

そんな儚い要素に注目した #デジタルでフィルムを再現したい というタグやレタッチが流行っていますが、それらはフィルムこそ最上と代弁しているように思えます。

予定調和に飽きてしまった

カメラが身近になると同時に写真展も比較的開催しやすくなりました。ただ、予想できる内容がすくなくありません。予定調和にいつまでときめきを維持できるのでしょうか。

最も嫌いな言葉は予定調和。
わざわざホールに足を運び、
いわゆる名曲をいままでと同じような演奏で聴かされて何が楽しいのか。
破綻のない芸術ほどつまらないものはない。
生きている以上、新しいものに驚き続けたい。(指揮者:田中信昭)


(今さら)モノクロ暗室を作った訳をざっくり挙げましたが、そもそも興味があってそれら考えが後押しになりました。(細々としたことはもうちょっとあるけど、それはまたの機会に。)

国内大手の富士フイルムがモノクロ印画紙・モノクロフィルムの撤退という逆風でしかない環境ですが、それでもツイッターのつぶやきから暗室レンタル・体験ワークショップの依頼が舞い込んできています。

ネット発信がこのようにリアルを形成していくことは、まさにネットとアナログ志向が出会った交流点であって、もしかしたらアップデートされた形、変化していく写真の今なのかもしれません。

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今週末は、1組2名で午前・午後:計4名の暗室ワークショップでした。

muto.photowork.jp

photowork.jp