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写真で食っていくためのノウハウ、風景写真のテクニックなど紹介します。

【御苗場vol.16 横浜】 勝手にレビュワー賞 ノミネート(2.1日目) 022 橋本 有史

御苗場会場に様々な作品が並ぶ中、広く眺めて見てもどれもレベルが高いため選ぶのに難しく、御苗場2日目は風景写真といえるカテゴリーから選ぼうと思っていました。とは言っても絵柄が風景でもコンセプトによっては風景写真ではなくなるのが判断に難しいところで、そのあたりは見る側のひとりとしての主観で判断いたしました。2.0日目は 218 大塚 栄二 をノミネートとさせていただきました。

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写真撮影・掲載許可もらっています



【御苗場vol.16 横浜】 勝手にレビュワー賞 ノミネート(2.1日目) 022 橋本 有史

自然風景を撮っているひとりとして、同じフィールドのライバルが増えて困るなんて冗談話をしましたが、作品作りとしての自然風景は撮影ツアーでお会いした夏頃からなのかなと記憶しています。風景写真は時間をかけて(例えば四季など)撮るイメージがありますが、不要なものを削ぎコンセプトを集約させていく行為の結果が半年ほどで形されています。

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写真撮影・掲載許可もらっています


ノミネート理由1:とにかくカッコいい

御苗場の場合広い会場に沢山の作品が並ぶので少なくとも足を止めるに値する何かが欲しいと思います。それは色がキレイだったり、何だろうと疑問に思って足を止めたり、なんらか作品が主張するものがありますが、橋本さんの作品「Sleeping Forest」はとにかくカッコいいよく足が止まりました。

国内で見かける風景写真でイメージするのが晴天の青空と(例えば紅葉のような)鮮やかな彩りのある写真で、加えて展望のいい撮影スポットなるもので撮ったものですが、「Sleeping Forest」はモノクロームで、通り過ぎてしまうような特別性のないシーンを撮影対象にされています。通り過ぎてしまうシーンと言っても絵柄ひとつひとつには独特の緊張感を含んでいること、一方作品全体をみると作品のゆとりを感じるあたりが不思議です。

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「風景写真」で画像検索した結果

ノミネート理由2:ストーリーがある

日本の四季、これは国内の風景写真でよく見かけるテーマです。テーマに上下はありませんが、登竜門的なお苗場にあえて(よく見る絵柄とともに)日本の四季を持ち込む必要はないかもしれません。

一方、「Sleeping Forest」は雨と言葉(季語)をテーマにされています。テーマは絞り込んだ方が主題が明確になります。写真とステートメントが交互に行き交い、その空間は雨の香りすら感じました。さらには雨が待ち遠しくさえ感じて、作品の中へ入っていく感覚が心地よかったです。

そして、日本人は美しい言葉を持ち、言葉も同じく日常的に通り過ぎてしまうものだということを作品の前で気づきました。

ノミネート理由3:未知の風景写真より、既知の風景写真

過去10年で写真表現とその評価は大きく変わりましたが、風景写真だけ取り残されたような感覚があります。それは先に挙げたように撮影スポットや彩りをテーマにしたもの多く、表現として挑戦的なものがないためです。また、和紙に彩度の低い(もしくはモノクロ)プリントをすればファインアートだと言うような風潮を短絡的だと感じています。(作品でなく作例であるため)

今年の木村伊兵衛写真賞に、風景写真である松本 紀生「原野行」がノミネートされたのは驚きでした。風景写真が受賞したのは過去に何回あったでしょうか。原野行が評価されたのはおそらく撮影に対する執念のようなもので、受賞に向けた評価するポイントは何を撮ったかより、星野 道夫との関係性にあると思います。(例えば超えたかどうか)

風景写真の役割のひとつに未知の風景を伝えること、例えば希少性が評価のひとつですが、今はインターネットの画像検索に取って代わります。未知は未知でなくなりました。かつて感じていた驚きを懐かしむように人は飽きる動物です。「Sleeping Forest」のような作品が増えていけば、写真業界で取り残された感のある風景写真がもつ表現の可能性を広げるきっかけになりうるのではないかと期待したため、ノミネートといたしました。

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勝手にレビュワー賞 ノミネート

【御苗場vol.16 横浜】 勝手にレビュワー賞 ノミネート(1日目) S11 田村 翔平 - The moment

【御苗場vol.16 横浜】 勝手にレビュワー賞 ノミネート(2.0日目) 218 大塚 栄二 - The moment